はんだ付け技術の基礎知識Vol.1「こてはんだ付け」

こてはんだ付けは、はんだ付け技法の中で最も古く、技術的に熟成した信頼性の高い工法です。こてはんだ付けの3つのメリットと、他の工法との選択基準について解説します。

信頼性のある伝統工法

こてはんだ付けは、数百年の歴史を持つ伝統的な技術。あらゆるはんだ付け技法の中で、最も古くから活用されているもので、技術的にも確立・成熟した、高い接合強度と素材の信頼性を誇る基礎工法です。

はんだ付けは、フラックス(はんだ付け促進剤)によって酸化被膜を除去した金属表面に、溶融したはんだが濡れ広がって(濡れ)、はんだ成分中に母材の金属成分が溶け込み(溶解)、はんだ材と母材の原子が相互に移動することで金属間化合物が形成される(拡散)という結合プロセスを経て達成されます。

こてはんだ付けの特長

(1)最高品質のはんだ付けができる

こてはんだ付けは、熱したはんだごてに糸はんだを供給して一点一点接合するため、常に新しく、純粋なはんだが使われます。ほかのどの工法と比べても、最も高く安定した接合強度と信頼性が確保された、「最高品質のはんだ付け」が可能です。

(2)電子部品に熱ダメージを与えない

リフローはんだ付けとの比較で、こてはんだ付けが優れている点は、電子部品に熱ダメージを与えないことです。こてはんだ付けでは、部品が熱を受ける時間は一般的に2秒以下と短く、電子部品に熱ダメージを与えないため、電子部品の性能を落とすことなく実装が可能です。リフローはんだ付けは、はんだを溶かすために加熱炉を使うので、電子部品に少なからず熱ダメージを与えてしまいます。

(3)はんだに不純物が混ざりにくい

フローはんだ付けとの比較で、こてはんだ付けが優れている点は、不純物の影響が少ないことです。こてはんだ付けでは、熱したはんだごてに糸はんだを供給して一点一点接合するため、常に新品の純粋なはんだ材が使用されます。フローはんだ付けでは、熱したはんだ材を何日~何週間も使用し続けるため、基板や部品の金、銅などが不純物としてはんだ内に溶け出て、組成が変化してしまいます。こうした不純物の溶け込みは、はんだの強度低下や耐久寿命の短縮につながります。

目的に合った工法選択を

こて先や糸はんだの種類が豊富で、用途に合わせて柔軟に選ぶことができるのも、こてはんだ付けのメリットです。例えば、高熱容量の部品に対しては、蓄熱量の高いこて先を使うことで、接合強度の高いはんだ付けが可能になります。

こてはんだ付けは優れた工法ですが、大量生産に適したフロー/リフローはんだ付けや、非接触で超微細部品の接合が可能なレーザーはんだ付けといったほかの工法も、現代の生産現場には必要不可欠なもの。各々の特性をよく理解した上で、最適な工法を選ぶことが大切です。

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