IPC

IPCと標準規格

IPCとは?

電子機器と部品の「組立要件と製造要件の標準化」を目的とする事業者団体です。製造業における全ての業務プロセスにおいて「品質の標準規格」を制定しており、世界中の様々な製造業にて採用・運営されています。

“エレクトロニクスをつなげる協会” 世界17か所に拠点

グローバルな製造業のための業界団体IPC、前身は1957年に発足。特に電子機器業界、プリント基板設計・製造業者、電子機器製造企業の発展と安定に多大なる貢献をしており、欧米やアジアにおいては、IPC標準規格が数多くのトップメーカーに採用されている。以来、エレクトロニクス業界のつながりを強化するための活動を行っている。

MILやNASA等の宇宙・航空に関する規格と発展に寄与

始めは、PCBメーカーが主であったが、各国のEMS、材料、電子機器メーカー等が加わり、供給・設計・調達・製造等、バリューチェーン全体品質の標準化を支援するようになった。

約30年前、米国政府の管理下にあった、MIL規格やNASAをはじめとする航空・宇宙製品関連の規格がIPCに移管された。それらは、現在のIPC標準規格の基礎となっており、時代の変化に合わせて持続的な改善・変更をしている。
IPCは製造業に携わる品質標準化の作成に深く関わり、世界的に統一された規格による産業の成長並びに安定化を助成している。

製造企業や研究機関による標準規格作成プロセス

標準規格を作成するのは、IPCの職員ではなく各業界の参加企業である。IPCはそのプロセスのみを管理し、統一規格を業界標準として促進する活動を行っている。規格作成においては、全ての製造者に門戸を開いている。IPCの規格基準において、間違いや時代に合わなくなった内容があれば、誰でも進言することが出来る。IPCはその内容について第三者の研究機関や専門家を交え、調査や検証を行い、規格基準の改善を行う。

Dr. John W. Mitchell
President & CEO of IPC

ISOやIECとの違い。 インターナショナルとグローバル・インダストリー・スタンダード

ISOと仕組みは同じ、しかし異なる標準化範囲

団体としての仕組みはISOと同じである。IPCは、設計標準、材料標準、PCB標準および実装標準などをカバーし、製造産業の品質管理や標準規格の統一化を主としている。主な役割は、企業メンバーと共に標準化規格を作成すること。標準化作成にあたっては、業界法人および研究機関と連携し、サプライチェーン間のバランスをとる。

IECとは違い、我々は各国の標準規格を取り上げるのではなく、世界中の企業と共にグローバルで統一化された標準規格を作成する。彼らの持つデータや専門知識をひとつの文書にまとめ、規格化を行う。

企業は競争優位を保つため、独自の情報を守ろうとする。こうした企業に力を合わせてもらうのは困難なこともある。しかし、IPCは、これをグローバルスケールで行っている。企業が共通の標準規格を作ろうとする最大の動機は、コスト削減と品質の安定化である。

取材・インタビュー協力:電波新聞株式会社様
インターナショナルスタンダードとグローバルスタンダードとの違い

IECは国際標準(インターナショナルスタンダード)を提供し、IPCは世界標準(グローバルスタンダード)を提供する。IECでは、規格を作り、遵守を求めるのは国であるのに対し、IPCでは国際的な企業が一堂に会し、標準規格を作成する。したがって、IPCは製品メーカーの技術責任者や品質責任者、経営陣と標準化のための作業を行う。それらの品質基準の順守は供給元や製造元である企業が世界レベルで取引先やユーザーに一定の品質を保証するためであり、国のためではない。

IPCは既にかなりの成果をあげており、製造会社にとってデフォルトの標準となっている。国のデフォルト標準ではないかもしれないが、企業間により作成され、それぞれがグローバルでの標準規格として使用するのである。

名だたるグローバルメーカーが参加 アップル、ボーイング、コンチネンタルなど

エレクトロニクス産業:ソニー, パナソニック, Apple, Motorola, BOSE
航空・宇宙産業:Boeing, Airbus, BAE systems, NASA, GE, UTC Aerospace Systems
自動車産業:Continental, Bosch, デンソー,矢崎総業
EMS産業:Foxconn, Flextronics, Jabil, Celestica, Plexus
ケミカル産業:3M, DuPont メディアカル産業:GE, Siemensヘルスケア
他多数, 3,500社以上

何故、今、世界でIPCが必要とされているのか? グローバル化を目指す日本企業へ

今日の世界経済では、国をまたがった企業間取引が当たり前になっている。例えば、米国法人であっても、日本企業から主要部品を購入し、中国のEMSで基板を製造し、メキシコにある工場でアセンブリーを行う。このようなグローバルビジネスにおいて、各国の標準規格を遵守することは当然重要だが、関連する企業間で共通した規格の元に品質を維持する必要性がある。また、文化や慣習が異なる様々な国において、統一された規格を共通言語とすることで、グローバルレベルで標準化された品質の維持・管理が可能となる。

製造大国である日本は、高品質を武器に世界で大きなシェアを確保している。そのような日本のグローバルメーカーは非常に高品質な自社規格により、今日のポジションを確立したのは間違いない。しかしながら、グローバル取引の際には、取引先が要求する品質基準がIPCとなっていく。IPCは自社規格の修正を促すものではない。大事なことは、自社と取引先が要求する規格の違いを知り、差異が生じた際の対応や対話を準備しておくことが必要である。

また、日本の中小企業においてもグローバル化は避けられない時代になっている。製品や言葉、販売ルートの開拓だけでは十分ではなく、「世界が求める品質レベル」を理解し、クリアしてこそグローバル化が達成される。