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IPCはんだ付・リワーク世界大会 日本人初の世界チャンピオン誕生

日々の努力と蓄積で勝ち取った世界に通じる『現場力』

株式会社ピーダブルビーは、IPCはんだ付リワーク世界大会2019の世界チャンピオンである松並亮輔さんが勤務している。滋賀県に本社を置き、プリント基板の設計や製造を中心に、日本のみならず北米でも事業を展開。今回は、世界チャンピオンとして参加した世界大会の様子、その技術力や現場力の源泉を探るインタビューを行った。

pwb
社名 株式会社ピーダブルビー (PWB Corporation)
創立 1978年創業、1982年設立
売上高 非公開
従業員数 134名 ※2019年2月時点
事業内容 プリント基板の設計、製造、実装組立と販売、OEM/EMS(受託生産)等

日々の工夫と改善の結果が、世界レベルへの第一歩

昨今の国内製造業ではネガティブなニュースが目立つが、その中で日本が、品質において今でも世界でトップレベルにあるという証明して頂いたことは、日本企業、特に多くの中小企業に大きな希望と誇りを与えてくれた。
 
世界大会での優勝という背景には、株式会社ピーダブルビーの企業理念、社員の方々や松並さんの努力の結果であり、必然であった。「より難易度が高い生産」、「より困難な状況」での現場対応力が、日本企業を支える、『品質』と『現場力』の源泉であることは間違いない。日々の工夫と改善が、日本企業持つ隠れた強みであり、その蓄積と世界基準が合致したことで、その強みが世界で見える化したのである。

(左)松並亮輔さん、(右)西川晶平さん

はんだ付一筋10年。高い品質と精度が求められる半導体テスター基板

――いま担当されている業務を教えていただけますか?

松並さん 半導体テスター基板に部品をはんだ付する業務を担当しています。半導体テスター基板は、大きさも形も厚さも異なり、一つとして同じものはありません。お客様の要望に答えることが信頼につながります。「できるならやってみよう」という気持ちを大事に、毎日試行錯誤の連続です。
 
西川さん 当社はもともと携帯電話メーカー向けに、プリント基板のアートワーク設計から製造、部品調達、実装、組立、筐体設計まで一貫した事業を行ってきました。2000年から半導体関連ビジネスに参入し、半導体メモリやICメーカー向けが使う検査ボードを開発しています。マツ(松並さん)は、入社以来ずっと半導体テスター基板のはんだ付を担当しています。

極度の緊張でドキドキだった日本大会

――日本大会へはどういう経緯で出場したのでしょうか?

松並さん 毎日、色々な基板にはんだ付をしていますが、なかなか外の世界を見る機会が少なく、自分のレベルはどれくらいなんだろうと常々思っていました。ちょうどその時に、ジャパンユニックスさんから、IPCはんだ付コンテスト日本大会のメールが届き、参加を決めました。

西川さん マツの作業は仕上がりがとても綺麗で下手ではないと思っていました。井の中の蛙ではいけませんし、自分のレベルがどこにあるかを知ること、色々見て経験してくることが大事だと思ったので会社としても背中を押しました。 (日本大会の様子)

――結果は参加者のなかで唯一、課題をすべてクリアしての優勝でした

松並さん 前の組まで課題をクリアできた人が誰も出ず、私も「完成させなければいけない」と思って手が震えるくらい緊張しました。どうしようと思ってニシさん(西川さん)を見たら、顔面蒼白で私よりも緊張してて(笑。それを見たらスッと楽になりました。課題をクリアした時は嬉しくて思わず叫んでしまいました。

――日本大会で優勝し、世界大会の出場権を獲得しました。この間はどう過ごされたのですか?

松並さん 通常の仕事に戻りましたが、営業が取引先にPRしてたり、お客様からも、より高い品質を期待されたりと、ハードルがひとつ上がったなと感じていました。前よりも仕上がりを意識するようにもなりました。
 
日本大会の課題ははんだ付だけでしたが、世界大会は部品を取り外して再実装するリワークも含まれます。そのためのトレーニングを約4日間、東京のIPC公認トレーニングセンターで受講しました。今までは、はんだ付もリワークも自己流でやってきましたが、業界標準であるIPCで理論的に学ぶことができて、とても収穫でした。知らなかったことや私のやり方と異なる部分も多く発見でき、ここでのトレーニングが本番でも大きく役立ちました。

いざアメリカへ。現地スタッフが完全サポート。大会では思わぬハプニングも

――大会はいかがでしたか?世界中から各国の代表者が集まり、今回ははんだ付とリワークもありました。

松並さん 2日間で行われ、現地には大会前日に入りました。現地では弊社の現地法人であるPWB America, Inc.のスタッフが合流し、移動から宿泊、食事まで何から何までサポートしてくれました。そのおかげで、日本の時よりは落ち着いていました。事前の情報で、中国や他の国の人々はスピードが相当速いと聞いていました。でも今回はリワークが課題にあり、速さは品質が同点の時に評価対象となると明確になっていたので、丁寧な作業と品質が重要だと始めから思っていました。世界大会ともなれば、完成させることは当然、その上で一つひとつの作業を考えながら慎重に、丁寧にやることを心がけました。

西川さん マツの作業は決して遅いわけではないんです。他の参加者と比べてというだけであって、彼も時間内に課題を終わらせられていたので相当な速さです。それでいて作業が丁寧だった。高いレベルでバランスが取れていたんだと思います。

松並さん 他国の参加者を見て感じたのは、確かに作業は速いのですが、多少強引なところが目立ちました。特にリワークで部品を取り外す時の丁寧さに欠けていた印象です。中国や東南アジアは量産工場が多く、そこで作業されている方が多かったのかなと思いました。

――大会ではトラブルもあったようですね

松並さん 大会主催者のミスでフラックスが会場に届かなかったんです笑。それで大会開始直前に、今回はフラックス無しで実施することになりました。フラックスを使うのが日常である中、一気に難易度が上がりました。

西川さん 想定外の事態が起きてからのマツには本当に驚きました。QFPのリワークについて、通常はフラックスを用いて、温風をあててQFPを取り外します。しかし今回はフラックスがありません。そこですべての接合部にはんだを巻き、はんだ内のフラックスを活かしながら部品を取り外しました。それからパッドを綺麗にし、再び実装したのです。このやり方をやったのはマツだけでした。他の参加者は温風を当てて、無理矢理外していたりと苦戦していたようです。あの方法ではパッドにダメージを与えるので、あの状況では正しい選択ではありません。

【一般的なQFPの取り外し方法】

【松並さんの適用した方法:はんだラップ工法】

※糸はんだをQFPの周囲に巻き付け、はんだごてで取り外す (IPC-7711/21 3.7.2.1項)

松並さん 私もはじめ温風を当てたのですが取れなかったので、この方法に変えました。スピードは落ちますが、取り外した後にパッドが元通りになり、その後の再実装が綺麗にできるんです。日本大会の後のトレーニングで、このやり方も教わっていたので活用できました。フラックスがないと言われた時は驚きましたが、あの場面でとっさに動けたのはトレーニングの成果だと思います。

西川さん あの臨機応変さは「さすが」と関心しました。日々のトラブル対応の経験が役にたったのかもしれません。当社の社風として、追い込まれた時でも、「常に対応策を考えて何とかする」という文化があります。そこにマツの逃げない姿勢が加わって良い相乗効果が生まれたんじゃないかと思っています。 世界大会の様子(YouTube)

結果、史上初のパーフェクトで優勝 日本人初の世界チャンピオンに

――史上初の満点で優勝です。はじめから世界一を狙っていたのですか?

松並さん 世界一を狙っていた部分と弱気な部分、気持ち的には半々でした。こういう場面で自分が頑張ること、世界一になることで会社に貢献でき、会社の名前を広げられると意気込んでもいました。その一方で、他の参加者の作業方法を見るだけでも勉強になるかなと気楽に考えていた部分もあります。

――優勝した時の気持ちは?

松並さん 発表された時、ニシさんや現地のアテンドしてくれた人たちがすごく盛り上がったのを覚えています。自分ができることをやって、それで周りの人々が喜んでくれたのが一番嬉しかったですね。

西川さん 当社の創業者である会長が本当に喜んでいました。自分が創業した会社から、こんなに素晴らしい技術者が生まれ、世界で結果を残したことが本当に嬉しかったようです。

松並さん 会長、社長をはじめ、会社の皆がとても喜んでくれて嬉しかったです。帰国後、ホテルで祝勝会も開いてくれて、何十人もの方が駆けつけてくれました。会社が盛り上がることが一番ですので、その意味では本当に良かったです。



目標ははんだ付のプロフェッショナル。はんだ付の楽しさを広めたい

――世界一になりました。これからの目標ややりたいことはありますか?

松並さん 社長やニシさんも含めて会社は、社員に対し常に「プロフェッショナルになれ」と言います。プロフェッショナルとは技術と理論の両方を身に着け、言語化できる人のことを指し、私はまだまだです。技術は経験と体が覚えているので自信があります。理論は勉強中で、人に教えるなんてまだ先の話です。それでも将来的にははんだ付の専門家として講師や教師のような立場になり、子供や多くの人にはんだ付の楽しさを伝えていきたいです。

常に考えながらの作業を10年間ずっと続け、多くの失敗もしましたが、それをどう活かすか。だからIPCのトレーニングは新しい知識と技術が身につけることができて楽しかったです。これを次の作業にどう活かし、工夫していくかの繰り返しです。

西川さん 会社としてもマツの技術と実績を最大限に活かすようなことを考えたいですね。世界大会の後、アメリカの航空・宇宙業界向けにリワークへ特化してビジネスをしている企業へ連れて行ってもらいました。限られた顧客で、案件数も決して多くはないですが、高い技術水準を求められ、一定のニーズがあるのがとても興味深かったです。例えばこうしたビジネスを日本でも展開できたらどうだろうと考えたりもします。

松並さん それは面白そうですね。

――最後に世界チャンピオンとして次回以降の大会はどうしますか?

松並さん 今回話題になったことにより、IPCからは次の日本大会はもっと参加者が増えるだろうと聞いています。日本国内の企業には多くの優れた技術者がいるでしょうし、そういう人と競うのも興味があります。チャンスがあれば、またやりたいですね。はんだ付の技術も変化していきますし、大会はそれを学び、体験できる機会としても非常に有効です。ただ、優勝者は次回大会の参加資格がないんです。だから次は他の方に出場してもらい、私はしっかりサポートできるようにしたいと思います(笑)

編集後記

IPCでは、以前までのはんだ付だけでは、世界大会だとそこまで大きな差が出にくく、スピード勝負になってしまう。本来は、品質が第一優先であり、スピード勝負は目的ではありません。そのため、今回より技術力が求められる、リワークを加え難易度を高めました。

はんだ付・リワークという限定的な世界ではありますが、多くの日本企業でPWB様と同じように世界に通じる強みが、潜在化しているはずです。是非、1社でも多くの企業が、その強みを世界で示し、高密度化が進むエレクトロニクス産業や世界市場での活躍へと繋げて頂けると嬉しく思います。

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